極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
そもそも、去年も数える程度しか学校に行けなくて、全員の名前を覚えられなかったのだ。

まあ、いいや。病棟のみんなが私のクラスメイトみたいなものだもの。

ただ、みんなは一、二週間程度で病棟を卒業していく。

何カ月もいるお友だちもいるけれど、そういう子に限って、ある朝ぽんとベッドが空いて姿を消していたりするから寂しい気持ちになる。

このまま一生、病室と自宅の行き来を繰り返すのかな。

だったら自分は、なんのために生まれてきたのだろう。

この病が治るのならば、苦しむ意味も治療する意味もあると思う。

でも、もしもただ死ぬだけだったら? 苦痛の先になにも待っていなかったら?

このお粥を食べる意味はあるのかな。

途方もない虚しさを抱えながら、痩せ細った手を動かしてお粥を口に運んだ。



「先生、一カ月ぶりです」

外来で挨拶すると、担当医の藤巻先生は困ったような顔で微笑んだ。

藤巻先生は母と同じくらいの歳の女医さんだ。私くらいの歳の子どもがいるそうで、いつも親身になってくれる。

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