極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
「やっちゃった……」

お気に入りのグラスだったのに。額に手を当てて反省する。

手を切らないように注意を払いながら大きな破片を片付けて、最後に掃除機をかけて細かな破片をすべて吸い込んだ。

「って、もうこんな時間!」

急いで着替えとメイクを済ませ家を出る。早足で出勤して、なんとか社長の出社前に到着できた。



眠気は働いているうちに気にならなくなるかと思いきや、午後になっても続いていた。

なんだかすごく体がだるい……。

熱はなかったよねと記憶を辿るうちに、朝、ドタバタしていて体温を測り忘れていたことに気がついた。

そこでハッとする。私、今朝薬を飲み忘れた?

ただでさえ疲れが溜まって体調が悪いのに、大事な薬まで忘れてしまうなんて、うっかりにもほどがある。

朝の自分を恨めしく思いながら、お願いだから今日一日だけ体力がもちますようにと祈る。

株主総会のリハーサルを終える頃には、定時を過ぎていた。

「実りあるリハーサルでしたね」

武久さんがフィードバッグをまとめた端末を小脇に抱え息をつく。

リハーサルでは本番さながらの質疑応答が行われる。

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