極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚～余命０年の君を、生涯愛し抜く～

その後過労でバランスを崩してしまったが、恋人と充実した生活を送ることで、以前と同様、精神が安定するかもしれないと同棲を後押ししてくれていた。

受話口からは返答がない。運転席に乗り込むも、行き先が聞き出せず苛立ちが募る。

「星奈の転院先を教えてくれ――伯父さん！」

懇願するように呼びかけると、彼はあまりにも冷静な声で『翔琉』と諭した。

『私が期待していた通りにはならなかった。現に彼女は今、死の淵をさ迷っている』

ぞっと背筋を冷たいものが駆け抜ける。死の淵――あまりにも重い言葉だ。

『忘れたのかい？　子どもの頃、彼女の身になにが起きたか』

恐怖を思い起こさせるようにゆっくりと告げる。

忘れるわけがない。俺の不用意な言動のせいで彼女が死の淵をさ迷った、あのときのことを。




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父は大手企業マーガレット製薬の経営者で、責任ある立場を担う反面、周囲になにを言われても聞く耳を持たないような人だった。

とくに女性関係は奔放で、既婚者でありながら何人も若い女性をかこっていた。

そんな経緯で生まれたのが俺――俗にいう愛人の子である。