極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
研究棟には見たことのない様々な機材が置かれていて、休日にも関わらず多くの人が熱心に働いていた。

危険な薬品や病原体を取り扱っている部屋や、セキュリティが厳重な区画は入ることができず、余計に興味をかき立てられる。

「おもしろそうだね。俺も研究してみたい」

素直な感想に、伯父は少しだけ誇らしそうにしていた。

研究棟から少し離れた場所に病棟がある。伯父が研究している難病の患者も入院していて、データを取らせてもらう代わりに最新の治療を施しているのだそう。

「研究室にばかりこもっていると見失いがちなんだけどね。研究の先には人間がいる」

そう説明して会わせてくれたのは、七歳の少女だった。

彼女は病室でひとり大人しく本を読んでいた。宇宙の図鑑に植物の図鑑、辞典など分厚い読み物が床頭台に積み上がっている。

病室の外から、そっと彼女を観察する。四人部屋なのに、入院しているのは彼女だけ。

ひとりぼっちでも動じておらず、慣れっこといった印象だ。

「彼女は幼い頃から難病に苦しめられていてね。入院が続いている」

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