極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚～余命０年の君を、生涯愛し抜く～

「ずっとここにいるの？」

「最近ここに転院してきた。ここに来る前も家と病院の往復だったそうだよ」

ということは、学校にも通っていないのだろうか。学校のない生活など、自分には想像がつかなかった。

世の中には病気で苦しんでいる人がいると頭ではわかっていたけれど、初めて現実を体感した。

「ずっとここにいるのは寂しいだろうね」

入院が続いているということは、友だちを作る機会もないのだろう。

「そうだね。話し相手でもいればいいんだが」

伯父がちらりと俺を見る。

「さすがに六つも歳が離れていると、仲良くするのは難しいか？」

もしかして伯父は、彼女の話し相手になるかもしれないと思って俺を連れてきたのだろうか。

「対等な話は無理でも、お兄さんとしてなら話せると思う」

俺は勇気を出して病室に足を踏み入れた。

彼女の冷めた目が一度こちらに向いたが、自分には関係ないと踏んだのか、再び図鑑に視線を落とす。

「なにを読んでいるの？」

話しかけると、今度こそ無視はできないと思ったようで、警戒心を含んだ目をこちらに向けた。

「……お花の図鑑です」