極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
覗き込むと、草花を使った雛人形や、花冠の作り方が載っていた。

「作ったことあるの?」

「いえ。お外には出られないので」

……残酷な質問をしてしまったかもしれない。すぐに悔いて取り繕った。

「花、取ってきてあげようか。作るだけなら病室でもできるだろ?」

彼女がパッと顔をあげ、驚いた顔をする。

「そんなことできるんですか?」

「ああ。この花なら、その辺の公園に咲いてた気がするし」

シロツメクサを指さすと、彼女の目がきらきらと輝きだした。ぺこりと頭を下げ礼儀正しく「お願いします」と言う。

「わかった。じゃあ来週の日曜日、晴れてたら公園に行って取ってくるから」

「ありがとうございます」

病室を出ようと背中を向けると、「あの」と引き止められた。振り向くと、彼女がもごもごとなにかを言いたそうにしている。

「……お名前、は」

ああ、名前が聞きたかったんだな、と腑に落ちる。

「翔琉」

「カケル、くん。私は星奈です」

「ああ。よろしく、星奈」

俺はベッドに近寄り、点滴をしていない方の手を勝手に持ち上げて握手する。細くて小さくて白くて冷たい、人形のような手だ。

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