極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
だが、穏やかな日常はそう長くは続かなかった。
その年の秋。実父の正妻が急死した。もともと体の弱い女性で、子どももいなかった。
跡取りがおらず困った父が、俺を正式に養子にしたいと申し出たのだ。きちんとした教育を施し、後を継がせるという。
母の葬式にも来ないで、今さら父親になろうだなんて、都合がいいにもほどがあると思った。
たとえ血が繋がっていようと、よく知りもしない男を父親だなんて呼びたくない。俺は伯父とここにいる。
怒りすら覚えたが、ふとこのまま伯父に迷惑をかけ続けていいのかと懸念がよぎった。
果たして伯父は、納得して俺を引き取ったのだろうか。
伯父は冷静で大人な人だから、子どもの前で嫌な顔は見せないだろう。だが口には出さないだけで、本当は俺を疎ましいと思っているかもしれない。
思う存分研究ができないのは確かだ。本当は甥っ子などにかまわず、一日中研究室にこもっていたいのではないか。
自分は伯父の負担になっているかもしれない、そう思うと胸が痛んだ。
「伯父さん。俺、あの人の養子になろうと思う」
悩みに悩んだ末にそう告げると、伯父はしばし無言で考え込んだあと、静かに頷いた。