極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
「その方がいい。私は君になにも残してあげられない」

そんなこと、と言いかけて口を噤む。

伯父との暮らしは楽しい。頑張れば褒めてくれるし、間違っていればたしなめてくれる。大きな声で叱られることはなかったけれど、俺の気持ちを理解して導いてくれるような人だった。

なにを残してくれなくてもいい。ここにいさせてもらえるだけで。

――だがそれは言葉にできなかった。

「……そうします」

尊敬できる立派な人だからこそ、迷惑をかけるのは心苦しい。実の親にはしないような遠慮を伯父にはしてしまう。

やはり本物の家族にはなれないのだ。



結局父は体裁を気にして母との関係を認めず、俺を血の繋がりのない養子として祇堂家に迎え入れた。

だが俺と父はあきらかに似ていた。養子と知らない人間が見れば、なんの疑いもなく親子だと思うだろう。

父の女性関係を知る人間は、端から隠し子のひとりやふたりはいるだろうと踏んでいて、俺を跡取りに迎えたところで文句も言わなかった。暗黙の了解というやつだ。

年が明けると同時に実父の家に引っ越し、三学期から新しい学校へ通うことになった。

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