極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
「そんなこと聞いてどうすんの? 興味あるって言ったら譲ってくれるわけ」

「ううん」

私はベッドの中で、点滴と包帯でぐるぐる巻きにされた左腕を持ち上げて、力を込める仕草をした。

「負けないって言おうと思ってた」

「……星奈のそういうとこ、敵わないわ」

今度こそ疲れた様子で、でもどこか吹っ切れたような明るい声で、彼女は病室を出ていった。

……私と月乃が逆だったらって、一度も思わなかったと言えば嘘になる。

でも私が月乃だったらそれはそれで苦しみがあっただろう。健康だろうと病に侵されようと、それぞれの苦難が待ち受けている。

それに私はたくさんの幸せに恵まれたから。今はもう誰かを羨ましいだなんて思わない。

今、私の手の中にある幸せは、病と闘ってきたご褒美だと思うから。

私の生きる道は、これまで生きてきた道は、今も昔も輝かしくて素晴らしいものだ。



それから二週間と経たず、私は研究用の特別病棟から一般病棟に移された。

子どもの頃に入院していた建物で、修繕されて昔よりも綺麗になっているがどこか懐かしい雰囲気が漂っている。

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