極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
すると、男性がすっと横に移動してきて、目線の間に割り込んだ。

「祇堂社長、と。本日からはそう呼んでください。馴れ馴れしい言葉遣いはあらためるように」

会って早々厳しい口調で叱責され、身がきゅっと引き縮まる。

「申し訳ありません……」

「いいよ、そんなにかしこまらなくて」

男性の背後から甘くて爽やかな低音ボイスが響いてくる。

祇堂さんがやってきて、いつもと同じ穏やかな表情で微笑んだ。

いや、厳密には同じではない。髪はサイドに分けられ、普段以上にきちんと整えられている。

光沢の強いブラックスーツは、これからパーティーにでも出席するのかというほどドレッシーだ。

「美守さん、よく来てくれたね。歓迎するよ。これからもよろしく」

そう言って眼鏡の男性の肩に肘を置いてもたれかかり、私ににっこりと笑顔をくれる。

男性は迷惑そうに眉をひそめながら眼鏡のフレームを押し上げた。

「そういった態度も今後はあらためていただけると――」

「なぜ? 俺は信頼できる人間だけをここに集めたはずなんだけど」

そう言って社長室の中に向かって、手を広げる。

< 29 / 267 >

この作品をシェア

pagetop