極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
彼はははっと声をあげて笑う。今まで見たことがないくらい、やんちゃであどけない顔をしていた。

「わざわざ山梨へ行ったのですか? ご自身で運転されて?」

「うん。いい気分転換になったよ。往復三時間もかけて食べに行ったんだなっていう妙な満足感があった」

「……ふふふ」

思わず口を押えて笑ってしまった。探せば東京だってほうとうを食べられるお店くらいあっただろうに。

でもきっと本場で食べるほうとうは、比べものにならないくらいおいしいのだろう。

「なんだか私も食べたくなってきました」

「じゃあ、今度食べに行く?」

「え?」

思わず声が裏返った。私もほうとうを食べに山梨へ? 祇堂さんと一緒に?

「日帰りじゃせわしないし、周辺に観光地もあったから、のんびり泊まりがけでもよさそうだよな。そういえば、近くに温泉街があったっけ」

戸惑う私をよそに、祇堂さんが顎に手を添えてプランを練る。

温泉――旅行、ということ?

そういえば、会社に勤めてからは一度も旅行をしていなかったっけ。大学生の頃にした家族旅行が最後だ。

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