極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
行っても行っても部屋がある。なんだかわくわくしてきた。

「あのっ、お部屋を見て回ってきてもいいでしょうか」

好奇心に耐え切れずそう声をかけると、祇堂さんは「どうぞ」と笑った。

中に入ると、まずは大きな和室。その隣には和と洋が上品に交じり合ったモダンな寝室。

さらに奥には洋風のソファやテーブルが置かれたサロンがあり、もうひとつの寝室に続いている。

「すごい……富士山が綺麗に見えますね」

サロンの窓からは絶景が臨めて、息を呑む。

山の上だけあって見晴らしがいい。天気もよくて、富士山の輪郭がくっきりと見えた。

そういえば小学校の修学旅行も富士山の近くだったっけ。

その頃は入院してばかりで、修学旅行も夢のまた夢だったけれど、もしも参加していたらこうして富士山を間近で眺めていたのだろう。

「俺もこの旅館は初めて来たんだけど、ここまで綺麗に見えるなんてすごいな」

サロンのガラス窓を開けバルコニーに出ると、澄んだ空気が心地よく、風に心が洗われるようだった。

「まだ夕食まで時間があるけれど、辺りを散歩してみる? それとも部屋でのんびり過ごそうか」

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