極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
「おそらくスピカかと。ひさしがあってここからじゃ見えませんけど、オレンジ色の星と北斗七星を繋げば、春の大曲線ができますよ」

「春の大曲線、か。授業で習った気がする。詳しいね」

「幼い頃は図鑑ばかり読んでいたので」

入退院を繰り返していた頃は、ひとりきりの時間が多かったから、本や図鑑をたくさん読みあさった。

とくに宇宙の図鑑はお気に入りで、星座の名前や由来もよく調べたっけ。

でも――。

「実物を見たのは初めてです。見られてよかった」

東京の明るくて狭い空じゃ、星座の観察には向かなかった。冬の空は澄んでいて、幾分かよく星が見えたけれど、のんびり観察していたら風邪を引いてしまいそうだった。

……ここに来てよかった。本当に。

私の体は治らないし、いつこの命が尽きるかもわからない。

彼と結ばれることも、きっとないだろう。

でも後悔はない。彼への想いも、今ここでこうしてふたりで星空を眺めていられることも。

目を瞑ると幸せに包まれて、なんだかこのまま永遠の眠りについてもかまわないような心地になった。


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