氷川先生はダメ系。

2話

〇氷川宅からの帰路(夜)
   薄暗い道を歩く奈緒。顔を赤らめる。
奈緒(うー、いつもの癖で変なこと言っちゃった!)
   回想する奈緒。
奈緒(私、氷川奈緒。世話好きでお人好しなのが高じて、ひょんなことから氷川先生のお世話をすることに……)
奈緒(……でも、氷川先生、)
奈緒、氷川の子犬のような表情を思い返す。
奈緒(料理すごく喜んでくれてよかった)
   奈緒、思い返しながら微笑む。

〇星ヶ谷高校・2-A教室(昼休み)
   にぎわう教室。
   茜が奈緒の教室を訪ねる。
茜「ナオー!」
   教室にいない奈緒。
茜「……あれ?」

〇星ヶ谷高校・廊下(昼休み)
   廊下を歩く奈緒。手には小さめの手提げ。
   理科準備室に向かう奈緒。
   火村から「あー、氷川はいつも理科準備室にいるんだよ」と言われたことを思い返しながら、廊下を歩く。

〇星ヶ谷高校・理科準備室(昼休み)
奈緒「あ、あのー」
   薄暗い理科準備室。薬品棚が所狭しと並ぶ。
   奥まった場所にある机に突っ伏して、白衣姿の氷川が眠っている。
奈緒「あ、あの、……先生?」
   ≪ごろん≫
   机から零れ落ちるように床に倒れ落ちる氷川。
奈緒「だ、大丈夫ですか!? 先生!? まだ体調……」
氷川「ん…んんっ……」
   目を覚ます氷川。
氷川「あっ……」
   氷川と目が合い、ドキッとする奈緒。
氷川「葉月、さ、…ん……」
   眠たそうな瞳の氷川。
   ≪ぐぅ~≫
   氷川のおなかが鳴る。
奈緒「あっ、これ、先生に!」
   荷物をあさる奈緒。
奈緒「これ、先生に作ってきたんです!」
   奈緒、お弁当を取り出す。
氷川「えっ!」
   キラキラとした目で見つめる氷川。
氷川「食べていいの!?」
奈緒「ええ、もちろん(お弁当を開けながら)」
氷川「うわぁ……!」
   さらに目を輝かせる氷川。
氷川「本当の本当のほんとーうに、食べていいの!?」
奈緒「(微笑みながら)はい!」

     ×  ×  ×

   氷川、弁当を頬張る。それを見つめる奈緒。
奈緒「おいしいですか!?」
氷川「うん! すごくおいしい!」
奈緒「そうですか、よかったです!」
奈緒(普段はクールでかっこいい氷川先生が、本当はこんなダメ系だったなんて……。
でも、今はこんな風にお弁当を喜んでくれている先生が、こんなにも愛しい)

 ×  ×  ×

   弁当を食べ終える。
氷川「おいしかったー! ありがとうね、葉月さん!」
奈緒「いえいえ、自分で作ったお弁当の余りなので」
   満足そうな氷川。
奈緒「あ、あの、迷惑とかじゃなかったですか……?」
   奈緒、心配そうに尋ねる。
氷川「迷惑? どうして?」
   あっけらかんと答える氷川。
奈緒「あ、いえいえ、なんでもないんです!」
   お弁当などを片付けようとする奈緒。
氷川「あ、お弁当……! 洗って帰すよ」
奈緒「いえ! 大丈夫なので! それじゃ!」
   理科準備室を出る奈緒。
   それを追いかけるように廊下に出る氷川。

〇星ヶ谷高校・理科準備室前廊下(昼休み)
   出て行った奈緒を見守る、氷川の後ろ姿。
   氷川の顔は、心なしか微笑んでいる。

   奈緒を見守る氷川の後ろには、さらに人影が……。
   氷川を見守る綾瀬 杏(16)。
杏「あの二人……」

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