氷川先生はダメ系。

3話

〇星ヶ谷高校・2-A教室(昼)
   授業をする氷川。
奈緒、授業を受けながら氷川を見つめる。
奈緒(氷川先生。いつもクールで学校のアイドル的イケメンだけど……)
   氷川の普段の様子を思い浮かべる奈緒。
奈緒(あんなに「ダメ系」なんて……!)
   少し落ち込む奈緒。
〇氷川宅(夕)
   放課後、氷川宅でエプロン姿の奈緒。
奈緒(氷川先生のおうちに上がるようになって何日かが過ぎた。)
奈緒「(意気込んで)……よし!」
   台所を借り、料理を作り始める。

     ×  ×  ×

奈緒「……できたっ!」
   部屋がピカピカになっており、テーブルには料理が並んでいる。
奈緒(家事にも慣れてきて、最近いい感じだ。)
   玄関が開く音。氷川が帰ってくる。
   リビングの扉を開ける氷川。
氷川「ただいま……って、すごい!」
   奈緒の料理に驚く氷川。
奈緒「えへへ……今日はちょっと頑張ってみました」
氷川「す、すごいよ! 食べてもいい?」
   荷物を置き、食べ始める氷川。
奈緒「ええ、どうぞ!」
氷川「うわぁ、すごくおいしい!(目を輝かせる)」
   幸せそうな表情の奈緒。

〇星ヶ谷高校・2-A教室(昼休み)
「ナオー!」
   教室で昼食を食べる茜と奈緒。
   奈緒はうとうとしている様子。
   茜の呼びかけで、目を覚ます奈緒。
茜「ナオ?」
奈緒「え? ああ、どうしたの?」
茜「? いや、なんか眠そうだなって。疲れてる?」
奈緒「いや、そんなことはないと思う、けど……」
茜「そっか。それならいいんだけどさ……」
   茜の話が始まるがどこか上の空の奈緒。

〇氷川宅(夕)
   放課後、今日もエプロン姿の奈緒。
奈緒「……さて!」
   掃除を終え、料理に取り掛かろうとする奈緒。
奈緒(料理……の前にちょっとだけ休け、い……)
   奈緒の視界が徐々に暗くなる。

     ×  ×  ×

   トントントン、という包丁の音で目を覚ます奈緒。
奈緒(……はっ!)
   身体には薄手の布団が掛けられている。
   台所には料理する氷川の姿。
奈緒(うそ、私、寝ちゃってた!?)
   氷川、奈緒が目を覚ましたのに気づく。
氷川「あっ!(ご主人様が帰ってきたときの犬のように)」
   少しうれしそうな氷川。
奈緒「あ、先生」
氷川「帰ったらよく寝てたから、びっくりしたよー」
奈緒「ごめんなさい、私……」
氷川「ううん、今は寝てて!」
奈緒「?」
   台所にご飯を用意しに行く氷川。
   氷川が料理を準備し終える。
氷川「じゃーん!」
   テーブルに氷川の家庭料理が並ぶ。
目を丸くする奈緒。
氷川「いつも、作っててもらって、申し訳なくって。……だから、」
   氷川、にっこりと笑う。
氷川「今日は葉月さんに食べてほしくて!」
奈緒「え、そんな、」
氷川「レシピ見ながら作ったから、自信はない、けど……」
   うなだれる氷川。
奈緒「そんな! よくできてますよ!」
氷川「本当!? 食べて食べて!」
   食べ始める奈緒。
奈緒「いただきます――!」
氷川「ど、どう、かな……」
   ゆっくりと噛む奈緒。不安そうな氷川。
   氷川、つばを飲み込む。
奈緒「うん! おいしいです!」
氷川「本当!? やったー!!」
   うれしそうな氷川。
奈緒(氷川先生の手料理。正直、野菜の切り方は雑だし、味付けもまだまだ、だけど……)
   奈緒、氷川の様子を見て微笑む。
奈緒(自分のために、氷川先生が作ってくれただけで、とっても嬉しい)

     ×  ×  ×

   リビング、二人でお茶を飲む二人。
氷川「ふー、よく食べた!」
奈緒「よく食べましたね」
氷川「分量多く作りすぎちゃったね……あれ?」
   談笑していると、玄関が開く。
   玄関の扉が開き、氷川透の姉、氷川 京(28)が部屋に入ってくる。
   両手に抱えていた買い物袋を落とす京。
京「……あなた、誰?」
   驚く奈緒。
奈緒(こ、この綺麗なお姉さんは誰――!?)
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