オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「いきなりですが、九条さんは(つがい)という言葉を聞いたことがありますか?」

自販機で水を買ってきてくれた漣さんは、ペットボトルを渡しながら私に言った。

「学生の頃に授業で少し……。でも、あれは小説の中の、いわばファンタジーみたいなものでしょ?」

「世界中のどこかにいると言われたら、そう思うのも無理はないかもしれませんね」


「え?」

正直、信じていなかった。

女の子なら『運命』という言葉に惹かれるかもしれない。けど、私はもういい大人だし。夢から覚めるには十分遅くない年齢だ。


そもそも、今まで身体が求めるほど惹かれる異性に会ったことなんて……。


「今まで九条さんは発情期が来た時は、どうやって抑えていたんですか?」

「薬を飲んで抑えたり、あとは発情期が終わるまで一歩も外に出なかったり。それでも我慢出来なくなったら、一人で処理してたことも何度か……」


「とてもつらい経験をしたんですね」

漣さんは頭を撫でて慰めてくれた。まるで子供をあやすときみたいに。小児科の、カウンセラーの先生をしてるからか、私も子供扱いされてるんだろうか。と頭を撫でられて嬉しい反面、複雑な感情が沸いた。
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