オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「あの〜、大丈夫ですか?」

「……へ?」


うずくまっている俺に話しかけてきた。綺麗な女性だ。腰まで伸びた黒髪は枝毛一本なくて、顔はモデル並みに可愛い。幼さが残るも、こんな女性に誘惑されれば誰もがYESと答えるだろう。


「これが大丈夫に見える……?」

つい悪態をついてしまった。俺が普通の、ベータなら声をかけられれば、俺からお茶でもどう?と誘って、そのままデートに行ける。なんて、夢見る妄想も現実に出来たかもしれないのに。

俺はオメガだから、それも最初から無理な話。こんな女性と付き合えたらどれだけ幸せなんだろう?


「今日は特に冷えますよね。これ、良かったらどうぞ。お家に入れてあげたいんですけど、知らない人は家にあげるなって、親に言われてるので。……ごめんなさい」

「……」


女性は何を考えているんだろう?知らない人を家にあげるな?そんなの常識だ。

本気で俺を助ける気だった……?騙されるな。なにか裏があるに違いない。と疑いながらも、俺は女性の優しさに思わず涙しそうになった。


女性はマフラーを俺に巻いてくれた。けれど、女性用なので、俺には小さい。でも、さっきよりも暖かくなった。それにコンビニの袋に入った、肉まんや温かいお茶、それにおにぎりにサンドイッチ。日持ちするカップ麺なんかも入っていた。
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