ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする


「……どうした、桜葉?」

「あ、あの…えっと……こ、康太先生っ」

「ん?」

今日言おうと決心していた、脳内で何度もその言葉を呟きシミレーションをした── でもいざそのタイミングになると中々言葉が口から出てこないものだ。
咄嗟に掴んだ手は引っ込みがつかなくなり変な汗までもが滲み出てくる。
ましてや顔面なんて茹蛸のように真っ赤になってしまっていた。

(ど、どうしよう…決めていたことなのに、恥ずかしくて言いたいことが頭から全部飛んじゃいそうっっ)

「桜葉…どこか具合でも悪いんじゃないのか? 顔が真っ赤だよ」

そう言って先生が桜葉の額に手を伸ばしかけようとしたところ彼女の一言によってそれがピタッと止まってしまう。

「せ、先生っ、あの…きょ、今日は家族には友達の家に…泊まるって、あの、言ってあるんです……」

その言葉の意味は大人である康太先生にはすぐ理解できた。
先生も聖人君子ではない、そういう気持ちが今までなかったといえば噓になる。
それも好きな女性が目の前で顔を赤らめながら彼を見つめている──先生の理性も我慢の限界にきていたのだ。

「──じゃあ……今日は、(うち)に…一緒に帰ろう」

自分の想いを受け止めてもらえたのだと、桜葉の肩の力は一気に抜けていくようだった、けれども胸の高鳴りは全く収まる気配がない。

「……はい」


それからの行動は早かった。
お互いの気持ちはもう既に同じ方向へと向いている、そう思うと居ても立っても居られない。
康太先生の部屋に着いた瞬間二人はもう快楽の世界へと陥っていくだけだった。

瞬間に唇を何度も重ね愛しむ様に大人のキスを繰り返す。
ベッドへと向かう間に桜葉の服は一枚一枚と脱がされ、そのまま二人はベッドへと倒れ込む。
桜葉に覆い被さる康太先生の身体はとても大きくて逞しい。

(……先、生…──)

二人は間近で互いの目を見つめ合った後、己の欲望のまま感情のままに時間を忘れ何度も求め合っていったのである──




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