ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする


『やっぱお前、見た目に寄らず根暗で陰湿だよなぁー。
……でだ、そんな院瀬見くんにちょっくら今回のカラクリを聞いておきたかったんだけどよぉ。お前、あのストーカーが今日行動起こすことと、あいつが彼女のストーカーってこと、何ですぐわかったんだよ?』

「彼女の護衛を」とだけ依頼され、詳しい経緯を全く聞いていなかった冠衣にとって、所々気になることがあったようだ。
それに対して岳は少し面倒くさそうに話し始める。

「あー…別にたいしたことじゃないですよ。
うちの会社の食堂って社員以外も利用可能なんですけど、先週一週間食堂へ通ってる内になんか周りに似つかわしくない客がいるなぁ~って気にはなってたんです」

『似つかわしくない客?』

「えぇ。うちの会社の周りってオフィスが多いんですよ。だから食堂も圧倒的に女性かスーツを着た男性だったり──でもその中に一人、汚れた作業着を着た男性がいたものだから俺も気になって時々見ていたんです。
そしたらあいつ……いつも鳴宮さんのことばかりずっと見ていたからもしやと思って……そこに鳴宮さんの相談も重なったというわけです。あいつ、作業着だから周りに溶け込んでいなくて帰りもつけていたのバレバレでしたからね」

『あ~、それでこっそりストーカー君の写真を撮って俺に送ってきたという訳か。まぁ、そのおかげであいつのこと調べるのは簡単だったけどな』

冠衣は探偵歴十年のベテランだ。
最初は探偵のアシスタントから、そして自分の探偵事務所を立ち上げ独立。
探偵の腕はいいし武道の経験もある──それに、浮気調査から企業の怪しいネタまで何なりと調べてくる。
たぶん彼の裏にはかなりヤバ目の情報屋が数名いるという噂だ。


「冠衣さんが誰だかすぐ特定してくれたおかげで、俺も短時間の内に色々と動きやすかったですし……それに今日の昼、あいつが食堂へ来た時、ある噂を流してみたんです」




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