ワケあり王子は社員食堂の女神に恋をする


岳はそんな軽い嫉妬心を内に隠しながらも桜葉と二人、う~ん…とサブの役割について考える。
そして暫くした(のち)、「あ、こういうのはどうかな」と一つの案を提案してくれたのだった──

──────……


「── え、いいんですか!?」

「ちょうど金曜だし、明日なら十八時ぐらいには上がれると思うんだけど、どうかな?」

「はいっ! それは先輩もきっと喜ぶと思いますっ。こちらこそ宜しくお願いします。先輩には私の方から伝えておきますね。
……あの、まだお仕事中だったのに話を聞いてくれて──ありがとうございます。
えっと…じゃあ、お仕事を邪魔してはいけないので私、そろそろ帰りますね。院瀬見さんもお仕事頑張ってください」

「ああ、ありがとう。鳴宮さんも気を付けて」

「はい」

その言葉を最後に一度閉じた折り畳み傘を再度広げようと岳に背を向け、いざ雨の中へ飛び出そうとした、
──その時だった

(…えっ──)

突然左手首を掴まれ強い力で引っ張られた桜葉は、その反動でまた軒下へと戻されてしまったのだ。
いきなりの出来事に驚きふと後ろを振り向くと、岳が気まずそうな表情を浮かべている。

「……あの、い、院瀬見さん? どうか、しましたか?」

「あー、いや……ゴメン、えっーと……その先輩って、お、男、なのかな?」

「…いえ女性の方、ですが…?」

「ん、あーそっかそっか。…いや、うん、明日一緒に行く人は男性かな〜って、ちょっと気になっただけだから。なんか急に引っ張ってゴメン──じゃあ、その…気をつけて帰ってね」

「?…は、い、ありがとうございます」

岳は桜葉の返ってきた言葉に安堵感を覚えると、咄嗟に掴んだ彼女の手首をすぐに解放したのだった。




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