週末だけ犬になる俺を、ポーカーフェイスな妻が溺愛してくる
「宮廷魔法使い様、貴方まさかこの迷い犬に『皇帝陛下』という名前を付けているのですか? それは、あまりに不敬だと思うのですが……」
「ええっ、誤解です! そういう訳じゃなくて、この犬は本当に陛下なんですよ! その証拠に、いまからちゃんと魔法を解きますから!」

 そう言って、魔法使いはなにやら小難しい呪文を唱えはじめる。

――これはまずい! 

 先ほどまであれほど人間に戻りたいと思っていたが、絶対に今ではない。
 反射的にその場から逃げようとしたウォーレンだったが、ウォーレンのフワフワの身体が光り輝き、ふわりと宙に浮き上がるほうが早かった。見えない力に抵抗しようとウォーレンは前脚をジタバタさせたが、時すでに遅し。
 空中に浮いたウォーレンの情けなく空をかいていた四肢はぐんと伸び、カレンが撫でていたフワフワの毛はどこかに消え、尻尾はあっという間に尻の付け根あたりに収納されてしまった。

――や、やめろぉ!
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