週末だけ犬になる俺を、ポーカーフェイスな妻が溺愛してくる
 ウォーレンの必死の抵抗もむなしく、眩い光がパッと閃いたあと、慌てふためいた顔の黒髪の背の高い精悍な男性が現れた。パパリッツィ帝国の若き名君、ウォーレン・ロイ・パパリッツィである。身体に異変はなく、完璧に人間に戻ったらしい。
 ウォーレンが人間に戻ったのを確認した魔法使いは、大きなため息をついて胸をなで下ろした。

「はあ、よかったぁ。これでまた、僕は魔法の実験に専念できる。しかし、眠気を吹き飛ばす魔法をかけたら、陛下が犬になるなんて、やっぱり魔法は奥が深いなぁ……。今度は違う呪文を考えなきゃ……」

 魔法使いは何かをブツブツいいながら、中庭を去っていく。実験のことしか考えていない彼は、時として相手が皇帝でも別れの挨拶を忘れて去っていくのが常だ。いまさら注意する気にもならない。
 それより、問題はカレンだ。

「なんてこと……」

 カレンはしばし唖然とした後、徐々に頬が赤くなっていった。もちろん、ウォーレンの顔も赤い。
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