白い菫が紫色に染まる時
【2011年高校二年の冬 菫 北海道】~トラウマと白~
【2011年 高校2年生の冬 菫 北海道】

白い。
純潔を連想させる白さが一面に広がり、もう冬が来たのだと感じる。
私は、雪一面の道を歩きながら息を吐く。
息を吐くと、寒さから白い煙が浮かび上がる。

最近は、雪を鬱陶しく思うようになった。
積もっていなければ、通学中、大きなスノーブーツを履いて歩きにくい思いをする必要もない。
制服の上にコートを着て、マフラーをぐるぐると巻き完全装備の私は、まるで雪だるまのような丸々とした恰好になっている。

しかし、道端ですれ違う人の中には素足の女子高生が何人もいる。
私には、到底信じられない格好だった。

小さい頃から雪国に住んでいると、他の地域で育った人たちより寒さに強くなると言われているが、私は例外のようだ。

十七年・・・・。

それほどに長い間、私はこの場所から離れたことがない。

私はうっかり足を滑らせないように、一歩一歩、慎重に雪を踏みしめながら歩く。
そのおかげか、無事に転ぶことなく学校に到着した。
玄関の前ではクラスメイトが雪合戦をして楽しんでいる。
元気だなと思いながら、遠くから、雪合戦の様子を見ていると、その中にいたクラスメイトのうちの一人がこちらに気づいた。

「おはよう!!菫も雪合戦やる?」
「いや、あと少しでホームルーム始まるから遠慮しとく!」

私がそう言うと、そのクラスメイトは「え、もうそんな時間?」と焦り始めた。
雪合戦に夢中で時間を気にしていなかったようだ。
「早く戻らないと先生に口うるさく怒られるよ」と茶化しながら、私は校舎に足を踏み入れた。

しかし、寒さは外とあまり変わらない。
私が通っている高校は古い公立の高校だ。
校舎内は室内というより、半室内状態であり、中は、暖房の効いた空間が広がっているわけではない。             
本日何度目かの「寒い・・」という単語を意味もなく呟きながら、靴を脱ぐ。

下駄箱の中には入らないので、一番上に乗せる。
そして、私は両手をさすりながら、急いで階段を上った。
教室のドアを開けると、少し暖かい空気を頬に感じる。
教室には小型のストーブが一つ置いてあるのだ。

「はあ~、生き返る・・・」
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