白い菫が紫色に染まる時
教室もさほど暖かいわけではないのだが、廊下に比べたら、断然マシだ。
窓側の後ろから二番目の席。
自分の席を見ると、その後ろの席には、幼馴染の白澄が既に座っていた。

白澄は、その名前の通り、肌が透き通りそうなほど白く、線が細い。
女子が羨む肌と体型を持っている。
吹雪に巻き込まれたら消えてしまいそうなほど繊細な印象を受ける。

そして、本来、私が座るはずの席。
白澄の前には、私と白澄の腐れ縁の友達である陽翔が座っている。
陽翔は、まさに絵に描いたようなスポーツ少年である。いつも笑顔が眩しい。
白澄と陽翔が並ぶと月と太陽みたいに正反対だと思う。

毎朝、その二人は私が教室に来るまでこの席で仲良く話している。
私がドアを開けて教室に入ると、白澄はすぐ私に気づいた。
陽翔と楽しそうに話しているにもかかわらず、私が教室に入るのと同時に、こちらに気づき、私の方を見るのは毎日のことだった。

「おはよう。菫」

白澄に、陽翔も「おはよう」と続く。
私もそれに返しながら、自分の席に向かった。
それと同時に陽翔は先ほどまで座っていた席を立ち上がり、入れ替わりに、私がその席に座る。

「相変わらず、朝から仲良いね。いつも何の話してるの?」
「そりゃあ、すみ・・・・」
「そんなことより、菫はいつにも増して、雪だるまみたいな恰好だね。ぐるぐる巻きで苦しそう」

陽翔がいたずらな笑顔で何か言いかけたが、それを遮るように白澄が、私の今の格好に言及した。

「しょうがないじゃん。寒いんだもん。こうでもしないと、凍え死ぬ」

そう言いながら、私は首に巻いてあるマフラーに顔をうずめた。
教室に到着しても、なかなかマフラーやコートを脱ぐ気にはなれない。 
     
「俺も、菫ほどじゃないけど、やっぱり寒いの苦手だわ~。北海道出身全員が寒さに強いわけじゃないんだっつーの」

私は陽翔の意見に同意し、彼の言うことにひたすら相槌を打って聞いていた。
しかし、彼は私と違って、寒いと言いながらも、毎年、雪遊びで、誰よりも大はしゃぎしているけれど。

その後、授業開始のチャイムが鳴り響き、陽翔は「じゃあ、また後で」と言いながら、自分の席に戻っていった。
彼の席はここの席とは真反対の位置にある。
壁側の前の席だ。
< 2 / 108 >

この作品をシェア

pagetop