青春の坂道で
はーーーあ、何でこんなややこしい国になっちまったのかねえ? 西欧の真似をすれば近代化したって喜ぶやつも居るけどさ。
そもそも近代化って何だよ? 近代って江戸から昭和くらいまでのことだろう?
つまりはさあ昔に逆戻りしたってことだ。 言葉もうまく使えなくなったのか?
やっぱり今の日本人は江戸時代よりも遥かに遥かに退化している。 先端技術を使っているから進化したように思っているけど。
社会コミュニティーを見れば一目瞭然だ。 江戸のほうが進んでいる。
現代のどんな法律よりも御成敗式目のほうが余程に道理に適っている。
日本国憲法よりも民法よりも17条憲法の方が余程にシンプルで分かりやすい。
あのなあ、無駄に法律用語なんか使うから庶民に理解されない法律になるんだよ。
そしてそれを分かっている弁護士と官僚だけが偉そうな顔をする。 そんなの要らないって。
あんたらさあ庶民の言うことだけを聞いて動いてたらいいの。 余計なことはしないで。
特に官僚連中ね。 法律を作るプロだか何だか知らないけどさ、「議員はここまで読まないからな。」って妙な追加文句を突っ込むんじゃないよ。
あんたらが国をまとめてるんじゃないの。 国をまとめてるのは庶民なの。
大多数の庶民を無視して生きていられると思うなよ。
さてさて俺は夢の中に居ます。 古い古い校舎の中で走ったり飛んだり、、、。
(この木造校舎は何なんだろう?) 教室を出て廊下を何処までも歩いて行きましょうか。
「先輩じゃないですか!」 懐かしい声が俺を呼んでいる。 振り向くとそれは幼馴染の幸太郎だ。
「よう。 こんな所で何をしてるんだ?」 「いやね、行く所が出来ちゃってさ。」
「行く所?」 「そうなんだ。 俺さもう先輩とは遊べないんだよ。」
どっか寂しそうに話す幸太郎の隣には妹の純子が立っている。 それもまた悲しそうな眼をして、、、。
「そうか。 気を付けるんだぞ。」 そう言って歩き始めた時、俺は寒気がして目が覚めた。
「兄ちゃん 葉書が来てるよ。」 ドアを叩くおばちゃんの声が聞こえる。
「葉書?」 ドアを開けて眠そうな顔で葉書を受け取る。
「あんたまた飲んできたんやな? 気を付けんと癌になるよ。」 おばちゃんは意味不明な有り難い警告をくれて一階へ下りていった。
「葉書か、、、。」 何気に差出人を確認すると、、、。
沼田純子、、、幸太郎の妹じゃないか。 「珍しいな。」
俺は何となく嬉しいような驚いたような顔で目隠しシールを剥がしてみた。
『お元気ですか? 木下さんが大学へ進んだ後、兄は自動車の整備会社に勤めました。
ずっと頑張ってて「将来は独立するんだ。」って話してました。
ところが、、、。
先月の24日、トラックの整備中に車体がいきなり崩れて下敷きになったんです。
病院で懸命に診ていただいてたんですが、先週兄は力尽きて旅立ちました。
次の日曜日にお別れ会をします。 来られるようでしたら連絡をください。』
「幸太郎が死んだってか?」 「行く所が出来た。」ってことは死んだってことだったのか。
俺は立ち尽くしたままで夢の中の幸太郎を探した。 でも何処にも居なかった。
葉書に書いてあった純子のスマホに掛けてみる。 しばらく出る気配は無い。
諦めようとしたところに純子の声が飛び込んできた。 「どなたですか?」
「木下です。」 「ああ、木下さん? 葉書が届いたんですね?」
「びっくりしたから掛けたんだ。」 「生前は兄がお世話になりました。」
「お世話? とんでもない、世話になったのは俺の方だよ。」 「ありがとうございます。 それで今度の、、、。」
俺は眠いのも忘れてお別れ会の話を聞いた。 「行かせてもらうよ。 久しぶりにお父さんにも会いたいから。」
「分かりました。 父にも伝えておきますね。」 電話は切れた。
一階ではおばちゃんと誰かが喧嘩をしている。 「うるさいなあ。 寝れないじゃないか。」
毛布を跳ね飛ばした俺は窓を開け放した。 いい天気だ。
こんな日は公園でのんびりと本を読みたいもんだなあ。 松本清張の本を片手に階段を下りていく。
またまたおばちゃんが変な顔で俺を見送っている。 スニーカーを履いた俺は外へ飛び出していった。
公園に来ると日当たりのいいベンチを探す。 「よしよし。」
そこでドッカと座って本を開く。 目の前には文学部の棟が見える。
パラパラとページをめくりながら教室に目をやる。 (誰も見てないなあ。)
ふと寂しくなったりしながらも本を読み続ける。 40分ほどして顔を上げると綾子が俺を見詰めていた。
手を振り返してみる。 すると慌てたように窓から離れてしまった。
「いっけねえ、怒らせちまったわ。 これじゃあ会うことも出来ないな。」 しょんぼりしてまた本に目を落とす。
松本清張、、、何でこいつの本を選んだんだろう? 不思議な気分に囚われながら読み進めていく。
時々、雲が流れて日差しを遮っていく。 そのたびに少しばかり肌寒い風が吹く。
俺以外公園には居なくて隅っこのほうにダンボールハウスが一つ二つ、、、。
ホームレスのやつがここを寝床にしているらしい。 昼間は何処に行ってるんだろう?
去年の夏だったかな、一斉調査とか言って役所の連中が調べに来たことが有ったよなあ。 でもあれで何が分かったんだろう?
昼間に来たって誰も居ないんだから証拠すら見付からないだろうに。 夜中に来いって言うんだ。
この辺ならなあ酔っ払いがうようよしてるよ。 たまに警察だって見回りに来るくらいだ。
昼間はどっかで稼いでるのかなあ? 近くに日雇いの作業場が有るからさ。
そんなことを考えながらベンチに寝転がってみる。 あったかくて気持ちいいなあ。
うとうとしていたら「こんにちは!」って元気な声が聞こえた。 「うわ!」
「ここに居たんですか?」 「何だ、綾子ちゃんか。 びっくりした。」
「驚かせてごめんなさい。 楽しそうだったからゼミが終わった後で飛んできたんです。」 「そっか。」
綾子も俺の隣に座った。 今日は眼鏡を掛けている。
「ゼミの休み時間に覗いたら木下さんが居たから、、、。」 「今日はここでのんびりしてるんだ。」
「そうだったんですね?」 「今日はゼミも休みだからさあ、やることも無いし本でも読んでようかって。」
綾子は公園内を見回した。 隅っこのダンボールが気になるらしい。
「あれか? あれはホームレスの家だよ。」 「ホームレスの家?」
「そう。 夜になるとここに来てダンボールに隠れて寝るんだ。」 「そうなんですね。」
昼も近くなったのか役所のチャイムが聞こえる。 「腹も減ったな。」
俺が立ち上がると綾子も付いてきた。 「ラーメンでも食べようか。」
「いいですねえ。 お供します。」 綾子は眼鏡をそっと外した。
「私、本を読む時には眼鏡を掛けてるんですよ。」 「そうなんだ。」
俺たちはそこから大学を一回りして古いラーメン屋に入った。 店内はままきれいかな?って感じ。
ここで料理を作っているのは80を過ぎたおじいちゃん。 でもさあ、この店のラーメンはどっか懐かしい味がするんだよなあ。
「何になさいますか?」 「そうだなあ、野菜たっぷり味噌ラーメンでも貰おうかな。」
「そちらのお嬢さんは?」 「ああ、私も同じ物で、、、。」
「じゃあ味噌ラーメンを二つですね? お待ちください。」 おじいちゃんは調理場へ向かった。
ラジオが掛かっている。 この店はおじいちゃん一人でやっているらしい。
そのせいか、客はそんなに来ないんだって。 それもどうかと思うけどなあ。
けど聞いてみたら40年以上ここでやってきたんだって。 俺には真似できないな たぶん。
メニュー表にはラーメン屋ならやるだろうってメニューが書いてある。 炒飯だって丼だって有る。
まだ若い頃には奥さんも手伝ってくれてたって言ってたな。 5年くらい前に亡くなったんだそうだ。
「お待ちどうさまでした。 ごゆっくりどうぞ。」 おじいちゃんは優しい顔でそう言った。
綾子は熱いラーメンに箸を突っ込んで歓声を挙げた。 「美味しそう!」
俺はもう何度か食べてるから味は知ってる。 でもまあ素直な綾子に思わず、、、。
「木下さんは食べたこと有るんですか?」 「ああ。 たまに来てるよ。」
「そうなんだ。 これからご一緒していいですか?」 「綾子ちゃんさえ良ければね。」
「私は構いません。 ゼミが終わったらいつでもどうぞ。」 「そっか。 俺はゼミも午後が多いから空いてたら誘うよ。」
「ありがとうございます。 やっと木下さんとゆっくり話せるわ。」 綾子はラーメンを啜りながら俺を見詰めた。
そもそも近代化って何だよ? 近代って江戸から昭和くらいまでのことだろう?
つまりはさあ昔に逆戻りしたってことだ。 言葉もうまく使えなくなったのか?
やっぱり今の日本人は江戸時代よりも遥かに遥かに退化している。 先端技術を使っているから進化したように思っているけど。
社会コミュニティーを見れば一目瞭然だ。 江戸のほうが進んでいる。
現代のどんな法律よりも御成敗式目のほうが余程に道理に適っている。
日本国憲法よりも民法よりも17条憲法の方が余程にシンプルで分かりやすい。
あのなあ、無駄に法律用語なんか使うから庶民に理解されない法律になるんだよ。
そしてそれを分かっている弁護士と官僚だけが偉そうな顔をする。 そんなの要らないって。
あんたらさあ庶民の言うことだけを聞いて動いてたらいいの。 余計なことはしないで。
特に官僚連中ね。 法律を作るプロだか何だか知らないけどさ、「議員はここまで読まないからな。」って妙な追加文句を突っ込むんじゃないよ。
あんたらが国をまとめてるんじゃないの。 国をまとめてるのは庶民なの。
大多数の庶民を無視して生きていられると思うなよ。
さてさて俺は夢の中に居ます。 古い古い校舎の中で走ったり飛んだり、、、。
(この木造校舎は何なんだろう?) 教室を出て廊下を何処までも歩いて行きましょうか。
「先輩じゃないですか!」 懐かしい声が俺を呼んでいる。 振り向くとそれは幼馴染の幸太郎だ。
「よう。 こんな所で何をしてるんだ?」 「いやね、行く所が出来ちゃってさ。」
「行く所?」 「そうなんだ。 俺さもう先輩とは遊べないんだよ。」
どっか寂しそうに話す幸太郎の隣には妹の純子が立っている。 それもまた悲しそうな眼をして、、、。
「そうか。 気を付けるんだぞ。」 そう言って歩き始めた時、俺は寒気がして目が覚めた。
「兄ちゃん 葉書が来てるよ。」 ドアを叩くおばちゃんの声が聞こえる。
「葉書?」 ドアを開けて眠そうな顔で葉書を受け取る。
「あんたまた飲んできたんやな? 気を付けんと癌になるよ。」 おばちゃんは意味不明な有り難い警告をくれて一階へ下りていった。
「葉書か、、、。」 何気に差出人を確認すると、、、。
沼田純子、、、幸太郎の妹じゃないか。 「珍しいな。」
俺は何となく嬉しいような驚いたような顔で目隠しシールを剥がしてみた。
『お元気ですか? 木下さんが大学へ進んだ後、兄は自動車の整備会社に勤めました。
ずっと頑張ってて「将来は独立するんだ。」って話してました。
ところが、、、。
先月の24日、トラックの整備中に車体がいきなり崩れて下敷きになったんです。
病院で懸命に診ていただいてたんですが、先週兄は力尽きて旅立ちました。
次の日曜日にお別れ会をします。 来られるようでしたら連絡をください。』
「幸太郎が死んだってか?」 「行く所が出来た。」ってことは死んだってことだったのか。
俺は立ち尽くしたままで夢の中の幸太郎を探した。 でも何処にも居なかった。
葉書に書いてあった純子のスマホに掛けてみる。 しばらく出る気配は無い。
諦めようとしたところに純子の声が飛び込んできた。 「どなたですか?」
「木下です。」 「ああ、木下さん? 葉書が届いたんですね?」
「びっくりしたから掛けたんだ。」 「生前は兄がお世話になりました。」
「お世話? とんでもない、世話になったのは俺の方だよ。」 「ありがとうございます。 それで今度の、、、。」
俺は眠いのも忘れてお別れ会の話を聞いた。 「行かせてもらうよ。 久しぶりにお父さんにも会いたいから。」
「分かりました。 父にも伝えておきますね。」 電話は切れた。
一階ではおばちゃんと誰かが喧嘩をしている。 「うるさいなあ。 寝れないじゃないか。」
毛布を跳ね飛ばした俺は窓を開け放した。 いい天気だ。
こんな日は公園でのんびりと本を読みたいもんだなあ。 松本清張の本を片手に階段を下りていく。
またまたおばちゃんが変な顔で俺を見送っている。 スニーカーを履いた俺は外へ飛び出していった。
公園に来ると日当たりのいいベンチを探す。 「よしよし。」
そこでドッカと座って本を開く。 目の前には文学部の棟が見える。
パラパラとページをめくりながら教室に目をやる。 (誰も見てないなあ。)
ふと寂しくなったりしながらも本を読み続ける。 40分ほどして顔を上げると綾子が俺を見詰めていた。
手を振り返してみる。 すると慌てたように窓から離れてしまった。
「いっけねえ、怒らせちまったわ。 これじゃあ会うことも出来ないな。」 しょんぼりしてまた本に目を落とす。
松本清張、、、何でこいつの本を選んだんだろう? 不思議な気分に囚われながら読み進めていく。
時々、雲が流れて日差しを遮っていく。 そのたびに少しばかり肌寒い風が吹く。
俺以外公園には居なくて隅っこのほうにダンボールハウスが一つ二つ、、、。
ホームレスのやつがここを寝床にしているらしい。 昼間は何処に行ってるんだろう?
去年の夏だったかな、一斉調査とか言って役所の連中が調べに来たことが有ったよなあ。 でもあれで何が分かったんだろう?
昼間に来たって誰も居ないんだから証拠すら見付からないだろうに。 夜中に来いって言うんだ。
この辺ならなあ酔っ払いがうようよしてるよ。 たまに警察だって見回りに来るくらいだ。
昼間はどっかで稼いでるのかなあ? 近くに日雇いの作業場が有るからさ。
そんなことを考えながらベンチに寝転がってみる。 あったかくて気持ちいいなあ。
うとうとしていたら「こんにちは!」って元気な声が聞こえた。 「うわ!」
「ここに居たんですか?」 「何だ、綾子ちゃんか。 びっくりした。」
「驚かせてごめんなさい。 楽しそうだったからゼミが終わった後で飛んできたんです。」 「そっか。」
綾子も俺の隣に座った。 今日は眼鏡を掛けている。
「ゼミの休み時間に覗いたら木下さんが居たから、、、。」 「今日はここでのんびりしてるんだ。」
「そうだったんですね?」 「今日はゼミも休みだからさあ、やることも無いし本でも読んでようかって。」
綾子は公園内を見回した。 隅っこのダンボールが気になるらしい。
「あれか? あれはホームレスの家だよ。」 「ホームレスの家?」
「そう。 夜になるとここに来てダンボールに隠れて寝るんだ。」 「そうなんですね。」
昼も近くなったのか役所のチャイムが聞こえる。 「腹も減ったな。」
俺が立ち上がると綾子も付いてきた。 「ラーメンでも食べようか。」
「いいですねえ。 お供します。」 綾子は眼鏡をそっと外した。
「私、本を読む時には眼鏡を掛けてるんですよ。」 「そうなんだ。」
俺たちはそこから大学を一回りして古いラーメン屋に入った。 店内はままきれいかな?って感じ。
ここで料理を作っているのは80を過ぎたおじいちゃん。 でもさあ、この店のラーメンはどっか懐かしい味がするんだよなあ。
「何になさいますか?」 「そうだなあ、野菜たっぷり味噌ラーメンでも貰おうかな。」
「そちらのお嬢さんは?」 「ああ、私も同じ物で、、、。」
「じゃあ味噌ラーメンを二つですね? お待ちください。」 おじいちゃんは調理場へ向かった。
ラジオが掛かっている。 この店はおじいちゃん一人でやっているらしい。
そのせいか、客はそんなに来ないんだって。 それもどうかと思うけどなあ。
けど聞いてみたら40年以上ここでやってきたんだって。 俺には真似できないな たぶん。
メニュー表にはラーメン屋ならやるだろうってメニューが書いてある。 炒飯だって丼だって有る。
まだ若い頃には奥さんも手伝ってくれてたって言ってたな。 5年くらい前に亡くなったんだそうだ。
「お待ちどうさまでした。 ごゆっくりどうぞ。」 おじいちゃんは優しい顔でそう言った。
綾子は熱いラーメンに箸を突っ込んで歓声を挙げた。 「美味しそう!」
俺はもう何度か食べてるから味は知ってる。 でもまあ素直な綾子に思わず、、、。
「木下さんは食べたこと有るんですか?」 「ああ。 たまに来てるよ。」
「そうなんだ。 これからご一緒していいですか?」 「綾子ちゃんさえ良ければね。」
「私は構いません。 ゼミが終わったらいつでもどうぞ。」 「そっか。 俺はゼミも午後が多いから空いてたら誘うよ。」
「ありがとうございます。 やっと木下さんとゆっくり話せるわ。」 綾子はラーメンを啜りながら俺を見詰めた。