可愛いわたしの幼なじみ〜再会した彼は、見た目に反して一途で甘い〜

第3話

○実里の家、自室(学校からの帰宅後)
 
実里:制服のままベッドの上で天井を見上げ寝転んでいる。
今日あった出来事を思い出している。ぼーっと放心した様子。
実里「・・・まだ信じられない、あの怖かった男子が、
   可愛かったいっくん?」
  「それに・・・」

*回想
一樹「みさと、会いたかった」
そっと美里を抱き寄せ、流れるように自然な動作で実里の頭にキスをする。
*回想終わり

実里 先ほどの出来事を思い出して再び顔が熱くなる。クッションに顔をうずめる。
実里「全然違う、あの頃のいっくんはどこにいっちゃったの・・・。」
(それに、「みさと」って――・・・。
昔は「みーちゃん」だったのに)

いつも心の中にいたいっくんという大切な存在。
もう会えないと思っていたが、突然成長した姿でみさとの前に現れ、、
実里の中には二つの矛盾した感情が沸き起こっていた。
また会えたという純粋な喜びと、戸惑い。

実里(タトゥーが見えた、ピアスも・・・。私が苦手なタイプの男子そのもの・・・)
  (言われなきゃ絶対気づかないよ。だけど・・・)

一樹のふにゃっとした笑顔を思い出す。
実里(笑った顔は変わってなかったな・・・)
  (あの見た目でそんな無邪気に笑うなんて、ギャップありすぎだよ・・・)
   (心の中でずっと想い続けていたいっくん。
   いっくんも同じ気持ちでいてくれたの?
   私に会いたいって思ってくれていた?)

  (で、でも背も私よりも全然高くて、髪も染めて、かっこい――)

赤くなりながら即座にその気持ちを打ち消す。

(住む世界が違うひとになっちゃったな・・・)
(いっくんだって今の私を知ったらがっかりするでしょ)
(いっくんが知ってる「みーちゃん」は、元気で明るい女の子なんだもん)
さみしそうな表情をする実里。
(少しさみしいと思ってしまうのは・・・勝手な気持ちかな)

○翌日の放課後、実里が通う高校(まだ辺りは明るい)
実里:高校で仲良くなった同じクラスの松岡めいと校門をくぐろうとしていた。
松岡めい:ポニーテールに丸眼鏡。快活な女の子。実里のよき相談相手。
演劇部に所属していることもあり、ときどき芝居がかった口調になる。

校門前がいつもより騒がしいと感じる実里。

女子生徒A「ねぇねぇ、ちょっとあそこ見て!」
女子生徒B「不良!?こわー・・・。どこの高校だろ。
・・・ってか、よく見るとめっちゃイケメンじゃない・・・!?」
女子生徒A「誰か待ってるのかな!?」

実里 彼女たちが見ている方をつられて見ると、なんと
校門の前、ガードレールにもたれながら片手でスマホをいじる一樹の姿が。

実里「!??」
めい「それでさー。ほんと笑えるよねー、・・・って実里聞いてる?」

めい「・・・?(返事をしない実里が見つめる方を見る)」
  「(一樹を見て)ぅわーお、こりゃまたすごいイケメンねー。
   うちの生徒に知り合いでもいるのかしら」

実里「めい、ごめん。また明日!」
めい「え!?実里の知り合い!??」

実里はめいに別れを告げ、一樹のいるガードレールに近づいていく。


そーっと一樹に近づいていこうとする実里の視線に気づき、先に顔を上げる一樹。
実里の姿が目に入り、ぱっと表情をゆるめる。

一樹「みさと、みーっけ」


実里 ぎゅっと心臓がわしづかみにされたようにどきどきする。
実里(な、なにこれ・・・。顔赤くなってないかな)
   「・・・っ、ちょっとこっち!」
とっさに一樹の腕をつかみ、学校のそばの人影のないところまで連れて行こうとする実里。
一樹「っうぉ!」

○場所を移動、ひと気のない路地裏
走ってきたので若干息を切らしている実里と一樹。

「ふぅ・・・」となんとか息を整えてから言葉を発しようとする実里。
実里「目立つことやめて・・・」
一樹「だってー。昨日実里が逃げるからだろー」
すねたような表情になる一樹。
実里(うっ・・・)
再び心臓をわしづかみされたように心臓の動悸が激しくなる。
実里を見据えたその透き通る一樹の瞳が、何を意味するのか少し揺らいでいるように見えた。

実里「なっなんで高校わかったの?」
一樹「はい、これ」
電車の定期入れを差し出す。
一樹「昨日落としてっただろ。・・・ごめん、中身みた」
実里(どこかでなくしたと思ってたけどいっくんが拾ってくれてたんだ・・・。
   そっか、学生証も入れてたってけ)
  「ありがとう・・・」
  定期入れを受け取る。
一樹「・・・ん」
   照れたようにうなじに手をやる一樹。
  少し間を置いて、
 
一樹「あのさ・・・、俺のこと怖い?」
実里「(ぎくっ)そ、そんなこと」
一樹「なんか目合わないし、みさとずっとビクビクしてる」
  「・・・お前の知ってる、かわいい"いっくん"じゃなくてがっかりした?」
  そう言って悲しそうな表情になる。

実里 「ち、ちがうよ。・・・ただ、びっくりして」
言いよどむ実里。
実里(あぁ、いっくんにそんな顔させたいわけじゃない。
   ・・・だけどこの感情、説明できないよ)
  (また会えてうれしい、だけどまだ気持ちが追いついていかない。
   私が知ってるいっくんとはあまりに別人だし、
   それにいっくんがよくても今の私じゃいっくんの隣には・・・)

一樹「再会を喜んでるのって俺だけ?
   俺はずっと会いたかったんだけど、みさとに」

一樹はじっと実里を見つめている。

実里(この瞳――・・・)

その瞳に、「いっくん」の面影を感じる実里。
そして、派手で不良を思わせる外見とは裏腹に、
実里に向ける笑顔はふわっと柔らかで温かい。
再会してから実里に見せてくれた笑顔を思い出す。


*回想
実里と一樹が小学2年生の頃。

○よく遊んだ小さな公園(夕方)

幼い一樹「みーちゃん!」

実里が公園に現れると
いつもぱっと顔を輝かせ駆け寄ってきてくれた可愛い男の子。

*回想終わり

実里 幼い頃の一樹を思い出していたが、
   ぱっと目の前の成長した一樹に視線を戻す。

   しかし、一樹の切ないまなざしに耐えきれず、目線をそらす。
実里(だめだ、がまんできない)
   止めていた涙腺が緩む、目に涙をにじませる実里。

実里(目の前にいるのは、あのいっくんなんだ。
   見た目は変わって、その笑顔を見ると気持ちが華やぐ。
   落ち込んでいても、心が満たされるような――。
   吸い込まれそうになる色素がうすい瞳も、
   あの頃と同じ・・・)

実里(やっぱり自分の気持ちには嘘つけないな――・・・・)
  (私だって本当は、本当の気持ちは、)

  「・・・私も会いたかったよ、いっくん」

   (ずっと会いたかった。
   可愛くて、
   ふわふわしてて、
   天使みたいだった大切なお友達。
   大好きだった男の子に)

思わずそう言ってしまい、堰を切ったように涙があふれる実里。

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