環くんは、フォーク化現象に悩まされている


ドアを開けてくれた環くんに促されるまま、屋上に足を踏み入れる。

環くんの手のぬくもりが、手首から消えちゃった。

さっきまで感じていた温もりが恋しくて、なんだかもどかしい。


でも言えないな。

恥ずかしすぎて。

今度は私の手を、ぎゅっと握りしめて欲しいなんて……



胸の高さのフェンスに、肩腕を乗せた環くん。

空を眺める横顔がとても綺麗で。

麗しさに引き寄せられるように、私も環くんの隣へ進む。


全ての景色がキラキラと光って見える。

ついさっき誘拐されそうになっていたなんて、信じられないほど。


でもそれは

『大好きな人の隣を独占している』

そんな幸福感の、高ぶりによるものなのかもしれない。

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