環くんは、フォーク化現象に悩まされている
サラサラな髪。

光の加減によっては紫っぽく見える。


女子嫌いで有名な、無気力王子様だもん。

私が『ケーキ』じゃなかったら、挨拶さえしてもらえなかったんだろうなぁ。



複雑な気持ちのまま環くんの髪を撫でていると、綺麗な手が伸びてきた。

手首が捕らえられ、ひゃっと私の肩が跳ねる。

引っ張られていると感じた時には、すでにペタリ。

私の手のひらは、寝ころんだままの環くんのほっぺに密着していた。


初めて感じる柔らかい感触。

環くんの頬のぬくもりだけじゃない。

もれる吐息まで感じてしまうかから、手のひらがくすぐったい。


椅子に座ったまま戸惑っていると、横向きで寝ている環くんがまぶたを開けた。

私と視線を合わせるためかな?

上半身を起こし、申し訳なさそうに瞳を揺らしている。


「……チョコちゃん……ごめんね」


「えっ?」
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