環くんは、フォーク化現象に悩まされている
環くんに会いたくないからで。
仁科さんと環くんが仲良くしている姿を、瞳に映したくないからで。
『珠須島が市護にしつこいくらいに付きまとうのってさ、何か裏があるんじゃね?』
心配顔のクラスメイトから放たれた言葉が、頭の片隅にまだ居座っているから、心がざわついてしょうがない。
環くんはフォーク。
ケーキが作った料理しかおいしく感じない、特殊体質。
私は環くんがおいしいお昼飯を食べるための、専属コックなんだけど。
確かにわからない。
私なんかにまとわりついて、甘えてくる理由が。
環くんを避けながら、いろんな場所で写真を撮る。
鬼の居場所がわからない鬼ごっこも、疲れちゃったなぁ。
カメラは重いし、足はパンパンだし。
技術教室棟の4階に来たものの、生徒が誰もいない。
がっかりだ。
階段をのぼったのに、太ももが疲労しただけって。
はぁぁぁぁ、下の階に降りよう。
……としたけれど、私の瞳がストップと指令を出した。