【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


「姉さんは他人の容姿に無頓着ですから、聞く相手としては間違っていますよ。ゴリラだの怪物だの言われても全く気にしないような人に、我々の繊細な心の機微なんて分かりません」
「ゴリラはあの見た目で繊細なんだ。ストレスですぐ食欲がなくなっちゃうんだから。私と一緒にされたら失礼だよ」
「……姉さんはそれでいいんですか」

 二人のやり取りを見ながら、セナは泣きそうなのを我慢した。よい友人を持ったと嬉しくなったのだ。

(俺もいつか、この双子に追いつけるくらい、強くなりたい)



 ◇◇◇



 幼いころのオリアーナに対する憧れは、いつしか恋心に変わっていった。

 オリアーナとレイモンドは、成長してもよいところは少しも変わらなかった。時間が経っても、変わらず三人は親しくしていた。けれど唯一、変わったところがあるとすれば、レイモンドが身体を患ったという点だけだ。魔法学院に入学する前に容態が急激に悪くなり、誰よりも見事に扱っていた光魔法も今の彼に扱うのは困難になった。

 レイモンドは天才だ。家柄もよく、輝かしい人生が保証されていた。でも、病気のせいであらゆる光を失ってしまった彼の絶望は、想像を絶するものだろう。

 そして、アーネル夫妻は、オリアーナに身代わり入学を押し付けた。オリアーナはいつも周りの顔色を伺って生きていて、特に両親の言いなりだった。アーネル夫妻はやたらとオリアーナにきつく当たるらしい。
 家の中での様子は全く知らないが、レイモンドは尋常ではないくらい両親のことを憎んでいた。でも逆に、オリアーナは――両親の愛をどこかで求めているように見えた。

 エトヴィンの呼び出しのあと。

「私が、次期聖女……」
「リア……」
「どうして私に教えてくれなかったの? セナは呼び笛のことを知ってたんでしょ」
「……」

 セナにとって想定外だったのは、彼女に聖女の力が目覚めたことだった。この国で唯一、召喚術を行使できる聖女。聖女に選ばれた者が現役引退まで生きている可能性は五分五分といったところか。……まして、オリアーナは非魔力者。魔法が使える聖女よりもずっと危険が高くなるだろう。
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