【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


(違う。本音は、高学歴で有能な息子を持つ名誉がほしいだけ……)

 両親はレイモンドのことさえ心から愛してはいない。自己顕示欲を満たすための都合のいい道具としか思っておらず、表面的な愛を注いできた。
 物言いたげに両親のことを見ていると、父がばんっとテーブルを叩いた。

「その顔はなんだ? オリアーナ。先日あれだけ躾てやったというのに、まだ足りないか?」
「…………」

 父に続いて、母も畳み掛けてくる。

「断るとは言わせないわ。出来損ないのあなたをここまで育ててあげた恩に報いるべきよ」

 ここまでオリアーナを育ててくれたのは、両親ではなく、心優しい乳母だった。両親はオリアーナには目もくれず、馬鹿にするばかりだったのに、こういうときだけは自分たちを棚に上げる。オリアーナにとって両親は、血の繋がりがあるだけの他人みたいなものだ。

「あなたはレイモンドが可哀想だと思わないの?」

 レイモンドのことは大事だ。彼はこんな家庭で育ったのに捻れておらず、とても優しい。
 今も私室のベッドで横になっているレイモンドを頭の中で想像する。
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