【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


 光に触れたその瞬間、心が安らぎ、愛おしい気持ちが込み上げて泣きそうになった。周りにいる生徒や、先生も、神聖な光に包まれて目に涙を滲ませている。


 ――これが、聖女の祝福なのだ。


 その珍妙な生き物は、祝福を届け終わると光の粒になって消えていった。とても優しげな表情で。一瞬の出会いだったが、消えてしまうのが惜しくて咄嗟に尋ねる。

「――また会える?」
「もう会えないヨ。僕は、君の一瞬の願いそのものだからネ。でもこれでいいんダ」

 にっこりと微笑みを湛えてそう言い残したら跡形もなく消失し、祝福魔法の効果による光も収まる。皆は感心を通り越して呆然としていて。しばらくの静寂のあとで、割れんばかりの拍手と歓声が上がった。

「やっぱ始祖五家ってすごい」
「こんな見事な魔法が見られて幸運でしたわ」
「首席ともなると格が違うぜ!」

 感激した生徒たちに囲まれ、賞賛される。

「……あ、ありがとう。でも今はテスト中だよ。席に戻った方が、」

「素敵でした!」
「今のどうやったんだ!? なんでぬいぐるみが喋ったんだ!?」
「つかあの変な生き物何?」

(それは私が知りたい……)

 一斉に質問攻めに遭い、当惑する。マチルダが苦言を呈した。

「静粛に! ただちに席に戻らなければ、全員減点しますよ!」

 マチルダの叱責に、生徒たちは血相を変えて席に戻った。

(なんだかこれ、変に目立ってる……?)

 果たしてこれでよかったのだろうかと考えていると、マチルダが言った。

「お疲れ様です、アーネルさん。長いこと教師をしていますが、祝福魔法で意志を持った存在を作り出した方は初めて見ました。評価に悩むところですが……下がってよろしい」
「は、はい。……ありがとうございました」

 オリアーナは一礼し、後ろに下がった。
 かくして、中間テスト四日目は終了した。



 ◇◇◇



 翌日。教室前の廊下には昨日のテストの結果が張り出されていた。五日目のテストは、この四日目の試験結果を元にペアが組まれる。五日目の試験内容は、戦闘実践である。

(えっと……私の名前は……)

 結果は点数の高い順に並べられる。自信がなかったので、真ん中辺りから名前を探した。

「上位は始祖五家が独占かー」
「いいよな〜俺も一位とか取ってみたい」

 横から話し声が聞こえ、はっとして視線を上げると、名簿の上の方――六位にレイモンド・アーネルの名前が。検出された魔力量は平均以下だが、先生からの評価は最も高いSだった。一位はジュリエット、二位はセナ。三位にはリヒャルドの名前が書かれていた。

「おいレイモンド。なんだこのヘボい魔力検出量は!? お前が一位取れないなんて、まして俺より下の順位なんて、どういうことだ。お前ならもっとやれるはずだ! 俺は知ってんだぞ! お前ならもっといけるって!」

 リヒャルトが結果表を見て、不満そうに言った。いつも張り合ってくるくせに、勝ってもなぜか嬉しくなさそうだ。オリアーナは六位でもかなり満足の結果だが、平均を下回る魔力検出量は、天才レイモンドとしては前代未聞かもしれない。
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