お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「いつ求婚するんだって、賭けてたんだよね。ほら、僕の勝ちだよ――兄上」

 と、弟のアントン。アントンはちゃっかりエーリッヒに右手を出している。しかめっ面になったエーリッヒは、アントンの手に銀貨を落とした。

 というか、ルークがいつオリヴィアに求婚するのか、賭けの対象にしていたのかこのふたりは。

「でも、本当にルークに嫁いでしまっていいの? 私の結婚、というかお兄様達も含めて、陛下が決めるのではなかったの?」

「ルークならば、問題ない。以前から、そうなりそうな気配はあると陛下に話はしていたんだ。陛下の方も、悪いようにはしないとおっしゃった」

 どうやら、知らないのはオリヴィアだけだったようだ。オリヴィアの気持ちは、隠すことができていたと思っていたのに。

(ルークとの……縁談……)

 じわじわと実感が込み上げてくる。

 辺境伯家の娘として生まれた以上、好きな相手との結婚は無理だと思っていた。それなのに、ルークのところに嫁ぐことができる。なんて幸せなんだろう。

「ありがとうございます。お父様」

 叶うはずのない願いが叶った今、オリヴィアは自分の幸福を強く噛みしめた。

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