お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 こんな姿でなかったら、抱きしめて、自分の腕の中で守ってやるのに。

(……そろそろ、我慢できなくなってきたな)

 オリヴィアが望まなかったから、使い魔としてこっそり会いに来るだけでなんとか自分を抑えていたのに。

 もう、気持ちを抑えなくてもいいのではないか。そんな気がしてきている。

 

 * * *

 

 裏町で薬草を育てていたのは、トリットという男であった。

 医師として働いていたのだが、とある貴族の命を救えなかったらしい。そのため、貴族の家の者に恨まれ、あの家で暮らすようになったのだとか。

 オリヴィアは彼を引き抜き、彼の家にはこれまた裏町に流れてきた別の医師を常駐させた。オリヴィアが手配した医薬品を使い、神殿に頼らず治療を行う場所としてトリットの家を使うことにしたのだ。

「神官の数も限られているものね。医師は必要だわ」

「はい、薬師も、です。オリヴィア様のおかげで、数を増やすことができそうです」

 トリッドには「王妃陛下」とは呼ばせなかった。最初から名前で呼んでもらう。

 きっと近いうちにオリヴィアはこの国を出ていくことになるだろうから。

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