お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 メロメロって、そんな言葉どこで覚えてきたのだ。エリサの言いたいことは、なんとなくわかるような気もするけれど。

「……いったぁい」

 どんっと背中と叩かれたエリサが声をあげる。

「あなたね、オリヴィア様に余計なことを吹き込まないの。今夜はお説教だからね?」

「ひぃ!」

 エリサの背後にいたのはマリカだった。両腕を組んでエリカを睨(にら)みつけている。左手に鞭(むち)を持っているのはどういうわけなのだろうか。城壁の上では、鞭なんて必要ないはずなのに。

「オリヴィア様、失礼いたしました。エリサはきっちりしつけておきますので」

「ほ、ほどほどにね……次、来るわよ!」

 城壁の上で、話に興じることができるのはほんのひと時。

 次の魔術を放つ用意をしながら、ルークを探す。

(……ルーク、無事でいて)

 彼が強いのは知っている。今まで傷を負わずに戻ってきたことが何度もある。

 けれど、魔獣退治中、なにが起こるのかは誰にもわからないのだ。

 城壁の下にいる騎士達の間、ひときわ目立つルークの姿。彼が無事でいることに安(あん)堵(ど)する。

「行くわよ――炎の壁!」

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