お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 再び広がるめらめらと燃え上がる炎の壁。焼かれる魔獣の悲鳴に、攻撃をしかける兵士達の鬨の声。

「オリヴィア、こちらは心配しなくてもいい。治療所の方に回ってくれ。マリカとエリサも頼む!」

「わかったわ!」

 こちらを振り仰いだエーリッヒの声が響く。城壁の下からオリヴィアのいるところまで声が届くのは、風の魔術を応用しているからだ。

「ザング将軍が対応していた東で、急激に魔獣が大量発生したそうです。東に回りましょう」

 風の魔術を使って、侍女仲間と通信していたマリカが報告してきた。そちらで負傷者が大量に発生したそうだ。

「もう一度、炎の壁を展開してから行くわ!」

 少しでも、兄達やルークの負担を軽減できるように。

 魔術を展開しておき、一気に城壁の内部へと駆け戻る。

(私は、辺境伯家の娘だから――)

 だから、戦いの場では、誰よりも働かなくてはならない。ひとりでも多くの兵士が生き残れるよう力を尽くさねばならないのだ。

 

 その日も、ルークは無事に戻ってきた。

 見張りの兵士達が城壁の上から、魔獣がやってくる森の方角を監視している。

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