お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 骨や筋肉、血管だけではない。どの臓器が、どんな役割を果たしているのか。それを知らない限り、回復魔術を効率よく発動させることはできないというのはオリヴィアも知っている。

「わかっているわ。お医者様と、同じだけの知識がなければ極めるのは難しいって」

 オリヴィアは、たぶん、能力的には優れているのだろうと自分のことを分析している。

 たいていのことは一度でこなせたし、一度でこなせなくても、何度か回数を重ねればさほど不自由なく身につけることができた。

 だが、人の命を預かる回復魔術はそんなわけにはいかない。生涯修行が続くことになる。そして、オリヴィアはそこにだけ労力を割くわけにはいかない立場にあるのだ。

「君は、真面目すぎるんだ――俺も入れてくれ」

「ちょ――きゃあっ!」

 なにをするのかと思っていたら、ルークはオリヴィアが身体に巻き付けていた毛布の中に入り込んできた。かと思えば、彼の膝の間に座らされる形に体勢を変えられる。

(待って、これって……!)

 いくらなんでも距離が近い。抜け出そうにもルークはオリヴィアの身体をしっかりと抱え込んでいるから抜け出すこともできない。
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