お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
いくら信頼のおける侍女達がいてくれても、離宮を離れるためという目標に向かって邁進していたとしても。

 なのに、ルークの顔を見て、声を聞いただけでそのひびは簡単に埋まってしまう。今の状況では触れ合うことすらできないのに。

 ふたりの間には、手を伸ばしてもぎりぎり届かないだけの空間がある。この空間こそが、今は大切。それを埋めることを許されるのは、オリヴィアが自由の身となってからだ。

「オリヴィアこそが、聖女みたいだな」

「からかわないでくれる? 私は、聖女なんかじゃなくて――」

「王宮で贅沢三昧の聖女より、オリヴィアの方が支持されているってことだよ」

「あなたの言いたいこともわかるけれど」

 ルークは手を伸ばすけれど、オリヴィアには届かない。首を横に振る。

(……ルークを抱きしめたいのに)

 彼の体温をもっと側で感じることができたなら。でも、それは許されないこと。

「気を付けて行ってきてね」

「ああ。オリヴィアも気を付けろ」

「シェルト殿下の側にいるから大丈夫よ」

 今、一番安全なのは、シェルトの側だ。今、一番失ってはならないのはシェルトの命なのだから。

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