お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 こちらに向いて座っている父の肩が落ちている。この世の地獄を見てしまったとでも言いたそうに。

「あの、お父様? お呼びと聞いたのですが」

「オリヴィアか――座れ」

 命じられるままに、父の向かい側に座った。

 オリヴィアが座ったのはわかっているはずなのに、父は口を開こうとはしない。

 父の表情を見ていたら、不意に嫌な予感に襲われた。

 ――もしかしたら。

「お父様、誰か亡くなったの……?」

 王都からの知らせが来たのは聞いている。もしかして、国王に近い誰かが亡くなったのだろうか。

 そうなったら、王都に誰か行かねばならないだろう。その分、残った者の負担は大きくなるし、まだ魔獣の討伐期は終わっていないが、ウェーゼルク辺境伯家の者が誰も葬儀に参加しないというわけにもいかないのだ。

「違う――違うんだ、オリヴィア」

 父の顔に浮かぶ苦悩の色。いつだって、父は冷静沈着。上に立つ者が不安を見せれば、不安はどんどん膨れ上がるものだからと、不安を見せたことはなかった。

 ――なのに。

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