お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 今の父の顔は、まるで違う。不安、恐れ、悲痛――どう表せばいいのかオリヴィアにもわからない。

 意を決したように顔を上げ、父は口を開いた。

「お前と、ルークの縁談だが、進められないことになった」

「どういうこと? だって、お父様もお母様も大賛成してくれたでしょうに」

 ルークが誠実であることは、両親だって知っている。ブロイラード伯爵夫妻とだって、何度も顔を合わせたことがある。国境を挟んでいるとはいえ、両家の関係はいいし、両国の関係も安定している。オリヴィアの縁談が止められる理由なんてないはずだった。

「違う――違うんだ。すまない。陛下のご命令だ」

「……伯父様の?」

 辺境伯家は、国王の忠実な家臣である。命令と言えば、オリヴィアの縁談ひとつ、王の一存で壊されても文句は言えない。

「すまない。お前は、ストラナ国王グレゴール・ベリンガーに嫁ぐことになった。陛下がそうお決めになったのだ」

「嘘よ!」

 国境の地にあるウェーゼルク領の南が接しているのはアードラム帝国のブロイラード領。北西部が接しているのがストラナ王国である。

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