お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
(……このところ、あの国は荒れていると聞いていたけれど……)

 グレゴール・ベリンガーは十五歳。つまり、オリヴィアと同じ年だ。

 昨年、グレゴールの父である先代国王が亡くなり、王太子だったグレゴールと第二王子シェルトとの間に王座をめぐる争いが始まったという。

 シェルトの母である当時の王妃は後妻。グレゴールとの仲も必ずしもしっくりいっているというわけではなかったらしいが――。

 グレゴールが勝利をおさめ、国王として即位したのは、今年の初めのことである。

(ルークとの話が出る前だったら、もしかしたらもっと素直に受け入れられたかもしれないけど)

 父が、ルークとの縁談を持ちかけてくるまでは、顔も知らない相手に嫁ぐのも運命だと受け入れていた。初恋は忘れて、嫁ぐつもりだった。

 ――それなのに。

 ルークと気持ちを確かめ合って、彼の花嫁になれるのだと心を躍らせた。

つい今しがたまで、結婚式には母の花嫁衣裳を借りるのだと胸を膨らませていた。

 それがすべてなかったことになる。

 世界に裏切られたような気がした。

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