お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「私は、ルークに嫁ぐって! 彼も嬉しいって……言ってくれたのに!」

 父の前で、こんな風に声を張りあげたことがあっただろうか。父が申し訳なさそうな顔をするから、こちらがいたたまれないような気持ちになってくる。

(私は、ルークと結婚したかった。今でもルークと結婚したいと思っている)

「受け入れられないわ!」

 叫ぶなり、部屋を飛び出した。父が、止めるのも耳に入らなかった。いや、耳に入れたくなかった。

 なにも聞こえていないふりをして、外へと向かう。

 すれ違う人達が、なにごとかというように、すさまじい勢いで走り抜けるオリヴィアを見送っているのもわかったけれど、気にならなかった。

(……なんで、なんで、なんで! 今になって!)

 声に出して叫ばなかったのは、かろうじてかき集めた矜(きょう)持(じ)。なにも知らない人達に、心配をかけたくなかった。

 城壁までたどりつき、階段をどんどん駆け上る。

 目の前に広がるのは、緑生い茂る森。草原。そして、東西に伸びる街道。

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