お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 今は魔獣の動きが活発になる時期だから、街道を行きかう人の姿は見えない。ここが、オリヴィアの育った場所。辺境伯家が守らねばならない場所。

「……こんな時でも」

 思わず、零した。

「こんな時でも、この地が大切だって思ってしまうんだもの」

 はぁ、とため息をつき、その場に座り込む。

(私はルークが好き。ルークを愛している)

 もし、ルークにオリヴィアを連れて逃げてくれと言ったなら。

 彼はどんな反応を返すのだろうか。

 グレゴール・ベリンガー。ストラナ王国の王――いや、王になったばかりの男。

 国内の貴族をなんとかまとめ上げたグレゴールは、王妃と異母弟のシェルトを離宮に軟禁しているそうだ。国内の争いを鎮めた今、国境を接しているイリアーヌ王国との仲を強固なものにしておきたくなったのだろう。となれば、求婚する相手はオリヴィア以外にいない。

(グレゴール王のことは、まったく想定していなかったわね……)

 膝を抱える姿勢で座り直した。

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