お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 王となった経緯が経緯だ。てっきり、国内の有力貴族の娘を妻に迎えるのだろうと思っていた。この国との関係は、必ずしもいいものとは言い難かったというのもその理由だ。

(ううん。この国との関係がよくないから……こそなのかも)

 国内の情勢が不安定であれば、隣国からの影響はできるだけ避けたいのかもしれない。

 昨年、一昨年と不作が続いた。王家が蓄えを放出し、民の生活はかろうじて守ることができたけれど、国力は確実に落ちている。

 今、ストラナ王国とことをかまえるのは、この国にとっても得策ではない。

 行くしかないのだろう。

 ルークへの想いは捨てたくない。

 ――けれど。

 ぐらぐらと揺れる気持ちを押さえつけようとする。

(そうよ、私は辺境伯家の娘)

 なにを甘えていたのだろう。この国を守るために嫁ぐのであれば、むしろ本望ではないか。

 勢いよく立ち上がり、想いを振り払うように歩き始めると、向こう側から、慌ただしく駆けてくる人が見えた。

「ルーク!」

 彼のもとを去らなければならないとしても、最後に彼が覚えているのは笑顔であってほしい。無理やり口角を上げ、笑みを作る。
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