お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】

 大丈夫。表情を取り繕うことぐらいはできる。口を開こうとしたら、ルークはがばっとオリヴィアを抱きしめてきた。

「話は聞いた! 俺と逃げよう!」

「できるわけないってわかっているでしょうに」

 国王の命令に背いてルークと駆け落ちをしたら、この家にどんな災いをもたらすことになるのか。

「私は、王女に準じる立場にあるの。陛下のご命令なら、陛下の命じる相手に嫁がなければ」

「俺が、もっと早く正式に求婚していれば!」

 ルークの声が、胸に突き刺さるように感じられた。

 彼の声にあるのは、深い悲しみ、そして絶望。

「……ルーク。私も、あなたと結婚したかった。息を引き取るその瞬間まで、あなたと共に歩みたかった」

 いくら強く望んでも、もう叶えることのできない願い。

 笑顔を覚えておいてほしいと思っていたはずなのに、唇は言うことを聞いてくれない。震える唇を叱咤して、言葉を重ねた。

「隣国で、立派な王妃になるわ。だから、この指輪はあなたに返す」

 ルークの目の色と同じ色の宝石がはまった指輪を外して、彼の手に握らせる。

< 33 / 306 >

この作品をシェア

pagetop