お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
大丈夫。表情を取り繕うことぐらいはできる。口を開こうとしたら、ルークはがばっとオリヴィアを抱きしめてきた。
「話は聞いた! 俺と逃げよう!」
「できるわけないってわかっているでしょうに」
国王の命令に背いてルークと駆け落ちをしたら、この家にどんな災いをもたらすことになるのか。
「私は、王女に準じる立場にあるの。陛下のご命令なら、陛下の命じる相手に嫁がなければ」
「俺が、もっと早く正式に求婚していれば!」
ルークの声が、胸に突き刺さるように感じられた。
彼の声にあるのは、深い悲しみ、そして絶望。
「……ルーク。私も、あなたと結婚したかった。息を引き取るその瞬間まで、あなたと共に歩みたかった」
いくら強く望んでも、もう叶えることのできない願い。
笑顔を覚えておいてほしいと思っていたはずなのに、唇は言うことを聞いてくれない。震える唇を叱咤して、言葉を重ねた。
「隣国で、立派な王妃になるわ。だから、この指輪はあなたに返す」
ルークの目の色と同じ色の宝石がはまった指輪を外して、彼の手に握らせる。