お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 まだ、サイズ直しをすることができていなかった指輪。抜け落ちてしまわないよう、上にちょうどいいサイズの指輪を重ねて付けて落とさない様にしていたもの。

 最初から手に入らないと思っていた。一度、現実になるのだと思ってしまった。

 ルークと想いが通じていなかったら、嫁ぐのにこんなにも身を切られるような思いをしないですんだだろうに。

「……オリヴィア」

「あなたを愛している。きっと、夫となる人にあなたと同じ気持ちを持つことはできない。でも、立派な王妃となるわ。両国の懸け橋となれるように――だから、だから……」

 今のうちに伝えねばならない言葉はたくさんあったはずなのに、出てこない。自分の唇が、こんなにも不自由なものだったなんて。

 オリヴィアの肩に手を置いたルークは、じっと目の奥をのぞきこんできた。まるで、オリヴィアの心の奥まで見透かそうとしているみたいに。

「もう、決めたんだな」

「……ええ」

 それだけで、ふたりには十分だった。ルークがどれだけ望んでも、オリヴィアは彼と別れて嫁ぐと決めたのだとちゃんと伝わった。

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