お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「この指輪は、お守りとしてずっと持っておく。もともと俺の指輪だけど――一度は、オリヴィアの手に渡ったんだもんな」

 オリヴィアの方から、ルークに贈り物をすることはできなかった。もう、二人の関係を断ち切ると決めたから。

「……ルーク」

 もし、もっと早く結婚していたら。きっと、こんなことにはならなかった。

 愛している。愛しているけれど、その気持ちはここに置いていく。

 夫とは、できる限り仲良くやっていこう。男女の愛はなくても、きっと互いに信頼することはできる。そして、いつかそれが家族としての愛に変わるかもしれない。いや、家族としての愛に変えなければならないのだ。

「さようなら、俺のオリヴィア」

「さようなら、私のルーク」

 ルークの手が、顎にかかる。なにをされるのか予感はしていたけれど、逃げようとは思わなかった。

 生涯ただ一度の、愛する人との口づけ。

 それは甘いのと同時に、どうしようもない切なさをオリヴィアの心に刻み付けたのだった。

 

 * * *

 

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