お飾り王妃は華麗に退場いたします～クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね？～【極上の大逆転シリーズ】

　ルークが初めてオリヴィアと出会ったのは今から五年前。ルークが十三歳、オリヴィアが十歳の時のことだった。

　ルークの生家――ということになっているブロイラード伯爵家と、ウェーゼルク辺境伯家の間には国境を越えた契約がある。

　魔獣が繁殖時期を迎え、気が立っている時には、互いに協力して魔獣の討伐を行うという契約だ。それは、アードラム帝国皇帝もイリアーヌ王国国王も認めている契約であり、この契約が結ばれて以降、魔獣による被害は大いに減少している。

　ブロイラード伯爵家の領地に出没する魔獣は春先から春の終わりにかけて。ウェーゼルク辺境伯家に出没する魔獣は春の終わりから夏にかけての時季に繁殖の時期を迎えるというのもちょうどよかった。

　互いに手が足りない時に、他家の兵力を借りることができるのだから。

「なんであんなちっちゃな子がいるんだ？」

　ウェーゼルク辺境伯の城に入った時、真っ先に目についたのは幼い少女だった。辺境伯家の人間らしく、上質のものを身に着けている。