お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 彼女がまとっているのは布で作られた服であったけれど、幾重にも保護の魔術がかけられていて、下手な鎧(よろい)よりもずっと強固に身を守ってくれるものでもあった。

「妹がいるって言っただろ」

「だって、あれ――前線に出る格好じゃないか」

 ルークに教えてくれたのは、辺境伯家の長子エーリッヒである。

 たしかに妹と弟がいるという話は聞いていたけれど、まさか妹が最前線まで出てくると思うはずないではないか。

「そうだよ? オリヴィアはすごく強いんだ。体力はないから城壁の上から魔術を撃つだけなんだけどさ」

 その時、ルークが受けた衝撃は大きなものだった。

 唇をぎゅっと引き結んだ生真面目な表情。城壁の上に立ち、十歳の少女とは思えない鋭いまなざしで魔獣達を睨みつけていた。

 いざ、戦いが始まれば、落ち着いた様子で、的確なタイミングで魔術を放つ。上から降り注ぐ炎の矢の前に、どれだけの魔獣が倒れたのか、数えることなどできない。

 戦いが終わったあと、目を離すことができなくて、ずっと見ていた。ひとりでどこに姿を消すのかまで見守った。

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