お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 まだ、彼女には怯えていてもらわなければならないのだ。

「ねえ、あなた。あなた、私がウェーゼルク辺境伯家の者だって知らなかったの?」

 指先に炎をともし、侍女長のすぐ目の前に持っていく。

 真正面には睫毛が焼けそうな距離に炎。頬にはいつ切りかかってくるかわからないナイフ。侍女長は目を見開いたまま、だらだらと汗を流している。

(そろそろ、かしらね)

 ふっと指先の炎を消し、オリヴィアはマリカに侍女長を離すよう命じた。十分脅しただろう。にっこりと笑ってソファに戻る。

「どうぞ、お座りになって? 建設的な話ができると嬉しいわ」

「け、建設的なお話と言いますと……?」

「あら、私、あなたとは仲良くやっていければいいと思っているのだけれど。王妃の予算をすべて持っていかれるのは困るわ。それは欲張りというものよ。そうね、半分で手を打たない?」

 浮かべた笑みをさらに大きくし、悠々と足を組み替える。侍女長は、のろのろと向かい側に座った。

「半分……?」

「ええ。私は、まともな食事があればそれでいいの。食事以外は、残った予算でやりくりするわ。いざとなったら、実家に頼ればいいし」

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